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第9話 反撃ののろし

مؤلف: 一木さくら
last update تاريخ النشر: 2026-09-22 05:34:18
「わたしに主担当になれ、ってのはただ、仕事を円滑に回したいだけだとは思うんだけどさ」

 藤堂と短い打ち合わせをした、翌日の昼休み。

 少し早めに職場を抜け出して、見晴らしのよい窓際のカウンター席で、遥は麻衣と昼食を取る。ついでに、主担当になってほしい、という藤堂のある意味爆弾発言を、なるべくなんでもないかのように麻衣に聞かせた。

 このところずっと胃の調子が悪い遥は、売店のレトルトのおかゆだ。社食備え付けの電子レンジが役に立つ。

 温め過ぎたおかゆで舌を火傷しないよう、そおっとスプーンでおかゆを口に運んでいる遥を横目に、麻衣はサンドウィッチとスープで優雅にランチを楽しむ。

「とはいえ、あの『氷の機械』がよくもまぁ、そんな越権行為のようなことを言ったわわねぇ」

 たしかに、チーム人員のやりくりは外から口出しすることでもないし、そもそも藤堂は受注側だ。発注側の人員配置にに口を出すなど、とんでもないことのはずだ。そして、それがわからない藤堂でもないはずだ。

「それはそう!」

 遥は、まず麻衣の言い分に同意をし、さらに引っかかり続けていることを口にした。

「でもなんでわたしなんだろ。鈴木君が気
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    「それでは、定例ミーティングを始めます」 鈴木の言葉でミーティングが開始される。 先週、一旦区切りの大詰めの打ち合わせだったとはいえ、新製品リリースまでは週次での進捗確認会議は続く。 淡々とお互いの進捗を確認し合った後、鈴木が何でもないことを話すような調子で、口を開いた。「製品撮りのスケジュールに変更が出ました。この資料にあります通り……」「鈴木さん、待って」 その途端、藤堂の鋭い声がかかる。「その調整は、鈴木さんは一切かかわっていないのでは?担当した人に話してもらいたいのだが」「し、しかし、このプロジェクトは私が管轄していますから……」 自分が説明することの正統性を主張しようとした鈴木の勢いが、しりすぼまりに落ちてゆく。それだけ、藤堂の圧が強い。 自分に向けられていないのに、その場にいる皆がその圧を感じ、顔を伏せてしまう。

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    「わたしに主担当になれ、ってのはただ、仕事を円滑に回したいだけだとは思うんだけどさ」 藤堂と短い打ち合わせをした、翌日の昼休み。 少し早めに職場を抜け出して、見晴らしのよい窓際のカウンター席で、遥は麻衣と昼食を取る。ついでに、主担当になってほしい、という藤堂のある意味爆弾発言を、なるべくなんでもないかのように麻衣に聞かせた。 このところずっと胃の調子が悪い遥は、売店のレトルトのおかゆだ。社食備え付けの電子レンジが役に立つ。 温め過ぎたおかゆで舌を火傷しないよう、そおっとスプーンでおかゆを口に運んでいる遥を横目に、麻衣はサンドウィッチとスープで優雅にランチを楽しむ。「とはいえ、あの『氷の機械』がよくもまぁ、そんな越権行為のようなことを言ったわわねぇ」 たしかに、チーム人員のやりくりは外から口出しすることでもないし、そもそも藤堂は受注側だ。発注側の人員配置にに口を出すなど、とんでもないことのはずだ。そして、それがわからない藤堂でもないはずだ。「それはそう!」 遥は、まず麻衣の言い分に同意をし、さらに引っかかり続けていることを口にした。「でもなんでわたしなんだろ。鈴木君が気に入らないなら、普通、その上位のマネージャーを指名しない?」「あんたが気に入ったんじゃないの?」 思わず熱いおかゆをそのまま飲み込みそうになって、遥は慌てる。「き、き、気に入ったって……そ、そんな対した働きぶりを見せたわけじゃないわ」 明け方の夢の、壁ドンしてきた藤堂の姿を思い返して、心臓の鼓動が乱れる。 麻衣は夢を知らないんだから、そんな好いた惚れたの方向では絶対言ってない。 麻衣は自分にそう言い聞かせて、あえて「働きぶり」という言葉を使い、注意深く仕事の話として平静を保つ。「そう?はたから見ていたら、あのリスケの調整の仕方は十分シゴデキよ?」「そうかなあ」 麻衣が、仕事ぶりの話に振ったので、早とちりしなくてよかった、と遥は安心する。 しかし、麻衣はあっさりそんな遥の気持ちを裏切った。「でも本当に、遥のことを異性として気にし始めたかもしれないわよ?」「ちょっ」 おかゆを呑み込んだ後でよかった、口に何か入ってたら、確実に吹き出してた。 壁ドンをしてきた藤堂のイケメンぶりが浮かび、遥はうろたえる。「まぁ、異性として、っていうのは冗談としても。あの藤堂さんなら

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    「マーケティング部、水野です」 社食だから普通の飲食店よりは通話について寛容ではあるが、それでも目立たない窓際に立ち、遥は恐る恐る電話に出る。「藤堂です。ぶしつけに電話をして申し訳ない。今、時間大丈夫だろうか」 意外と柔らかい物腰に意表を突かれながらも、遥は問題ない、と答える。「チャンネルに投稿してもらった話を読んだ。できればどうなっているか直接聞かせてもらいたいのだが。たまたま今、場所的にはかなり近いところにある、別のクライアントと打ち合わせが終わったところなので、都合が合えば寄らせてもらいたいのだが」 えぇぇ。直接?そしてこの言い方だと、割とすぐ? ドギマギしながら、遥は努めて冷静な声を出す。「はい、弊社にはあとどれぐらいで到着のご予定でしょうか?」「30分で着く」 ひゃぁ、30分? と、心は騒がしく声を出すが、そこはぐっとこらえ、遥は軽く微笑んだ。

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     涼やかな後藤の声がフロアに響いた。「ミスを隠してどうにかしようなんて、いつの時代の話ですか?今の世の中、もう令和ですよ。何でも透明性を確保して進めるのが一番です」「おまっ」 鈴木がガタッ、と立ち上がり、その場の雰囲気が一気に悪くなる。  自分が起こした行動で思わぬ波紋が広がり、遥は思わず痛み始めた胃のあたりを押えた。そして場を収めるために口を開こうとした瞬間。「鈴木、落ち着け。ちょっといい気になりすぎだ。後藤の言い方もどうかと思うが、一理ある」 いつも鈴木の肩を持つマネージャーの原が静かに声を上げた。「お前がいつも、何かの調整をするときに今回の水野のように投稿する癖さえつけていれば、俺はお前が製造部に根回ししてないということに気が付いてフォローもできた。だが、お前は常にどこにも投稿しないし報告もしてこないから、『今回も見えてないだけで、根回ししているんだろう』と思ってしまった」 原は短く息をつく。「すべてうまくいけばいいが、やはり抜けてしまうこともあるだろう。今回のように。鈴木、少しやり方を考え直せ。……水野」「は、はい」「チャンネル投稿は間違ってないから気にするな。悪いがリスケのフォロー、頼む」 今までマネージャーの原にフォローされた記憶のない遥は、何が起きているかよくわからないながら、何とか頭を下げて了解の意を伝える。「打ち合わせ、行ってくる」 原はノートPCをパタリ、と閉じると小脇に抱えて会議室に向かってしまう。 原がとりなし、その後すぐ退場したことでようやく弛緩した空気の中。 ほとんどのメンバーがPCに向き直って仕事を再開していっているというのに、小田だけは険しい笑顔でこちらに歩いてきた。 逃げた方がいいかもしれない。 本能的にそう思った遥だが、うまくその場を離れる方法を思いつくことができない。小田はあっという間に遥の前までやってきた。「鈴木さんのあとは、マネージャーに鞍替えですか?意外と男好きするんですね、水野さん」 嫌味な嫌な笑顔で、痛烈な皮肉を言う。 あの、麻衣と飲んだ夜に見た夢での小田、そっくりな笑顔と発言内容だ。 ……あの夢、あながち間違いじゃないんだなぁ。 まさかの夢と同じ現実に思わず毒気を抜かれ、反撃も忘れ呆然と歩き去る小田の背中を、遥は見送る。 がん、と大きな音を立てて鈴木が席に座り直したこ

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